本好きに送る「電子書籍のつくり方」講座

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緊デジを振り返りながら

自分が思う“問題点の根っこ”

昨日、緊デジを振り返る集会@仙台に行ってきました。

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この会は、緊デジ(経産省コンテンツ緊急電子化事業)に審査委員会というかたちで、内側から関わられていた永江朗さんと仲俣暁生さんを招き、その実情を伺う、といった趣旨の集まりでした。

会が進み、壇上の方々の発言が続いて行く中、私の頭に浮かんだのは藪の中という言葉でした。

先のお二人を始め、壇上のみなさんは、基本的に「自分は事業の本質には関与していなかった」という前置きをしたうえで、ご自身が知っている“事実”を説明し、それについての考察を述べられていたと思います。そういう意味で今回の会を「税金の無駄づかいを糾弾するイベント」だと考え参加された方には、いささか迫力不足に感じたと思います。

私自身は、登壇者が時系列に沿って説明する「事業がいかに進んだか」を聞きながら、当時制作会社の人間としての関わった緊デジ事業の体験を思い出しつつ、メモを取りながら聞き進めました。

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(ここ数年でいちばん熱心にメモを取った気がしますw)

今回このエントリーでは、会に参加して「ここが緊デジ諸問題の根源ではないか?」と私が感じた部分について述べてみたいと思います。

それは「仮申請段階の9万点が本申請に繋がらなかった」ことです。

仮申請段階では5月段階で約9万3000点が申請され、確かに出版社の関心は高かった。その後、本申請が開始されたが、最近の数字では本申請承認済み出版社は264社(7月27日)、申請済み点数は2,373点(8月31日、いずれも同事業特設ホームページより)予備申請の数字に比べると、その数字はかなり下回っている。

http://ameblo.jp/ryuutai/entry-11362993899.html

例えば営業マンがいたとして、受注見込みに対しての達成率が2.55%(上記の数字2,373/93,000)だったとしたら、これは厳しい叱責は間違いないでしょう。またその「見込み」(緊デジで言うところの93,000という数字)の数字自体が「そもそも何だったのか?」も問われます。「その見込みの根拠は何だったのか?」と。

(本申請が増えない)原因の一つには、著作権者との権利関係が整えられていない現状があるだろう。予備申請の段階の数字は、出版社側の希望的な数字であり、その時点では著者との権利関係は問われていない。しかし本申請にあたっては、権利関係は出版社側がクリアしなくてはならない。出版社側が仮申請した既刊本でも、電子化を予想した出版契約がなされていたものは多くないはずで、そこを解決できずに実際の申請に至らないでいるケースも少なくないはずだ。

先に出てきた営業マンなら、例えば「営業をやったことがなかったので希望的観測で目標を設定しちゃいました。すみません」といった申し開きもアリかもしれません。

しかし緊デジの場合は「やってみなければ分からなかった事」ではなかったはずです。

それとも緊デジを中で仕切っていた方は、出版社の事情や著作権の仕組みを知らない人たちだったのでしょうか?

この部分が最大のミステイクだと私は感じましたし、逆に言えば希望的観測でなく実情を把握してタイトル集めをしていたのなら、もしかすると「大手出版社」や「マンガ」に依存しないカタチで、当初標榜していたような理想を叶える事業にもなりえたのかもしれない、そう感じました。

こう書きながらも、さすがに予備申請の数値がそのまま本申請につながらないことを、早い段階で気付いていた人が事業の中核にいたはずだと思います。そしていたのであれば、なぜこのようなこと(いつまでたってもタイトルが集まらない→時間ギリギリに駆け込みで大手出版社からマンガ中心にタイトルを集める、というあまり筋の良くない手法で対応)になったのか、この辺りの実情はできれば当事者の方からお聞きする機会があるといいのですが…)

続きます。