音声付き電子書籍を作る(iBooks用_1)
「電子書籍」ならではの機能=音声
様々な電子端末で読むことができる電子書籍ですが、そのうちの多くが「単に紙の書籍を電子化したもの」です。もちろんそれはそれで便利で有用なものなのですが、かたや「電子」ならではの特長を活かした電子書籍もあります。
そのなかでもニーズが高い音声付き電子書籍について、その作り方を紹介します。
音声付き電子書籍は
- 語学学習用教材として
- オーディオブック(耳でも読める本)として
- 視覚障害者の方向けの「本」や「教科書」として
など、既に様々な分野で利用され、今後一層の普及が予想されます。
上の動画と同じような機能を持ったEPUBを、これから数回に渡り、作り方を紹介していきます。
このブログでは、Appleの「iBooks」(iPhoneやiPad、Mac(OS X 10.9〜)で利用可能)で読める音声付き電子書籍の作り方を紹介していきます。なお今回このリーディングシステム(以下RS)を選んだ理由は「使いやすさ」と「音声付き電子書籍機能が使えるRSとして普及しているもの」だからです。
「音声付き」とはいえ、その構造自体は、このブログで紹介してきた「EPUB」なので、ベーシックなものを作るのであれば、普通のEPUBを作る知識で十分です。
逆に「凝ったこと」をやろうとすれば、それ相応の知識(HTMLやCSS=web制作の知識)が必要になるのは、普通のEPUB電子書籍と同じです。
まずはベーシックな「音声付き電子書籍」を作ってみましょう。
仕様について
まずは「どのようなものを作るのか」の話しをします。
仕様はざっくりいえば下記のとおりです。
- 基本的にEPUBである
- リフロー(流動)型でなく、フィックス(固定)型である
- 音声は「録音した音声」を使用する
基本的にEPUBである
「基本的に」とつけたのは、「すべてのRSで音声が機能するわけではない」という意味です。EPUBの規格に沿った構造で制作はしていきますが、いくら音声データを埋め込んだところで、RSにそれを動かす仕組みがなければ「普通の電子書籍」としてしか機能しないのはご理解いただけると思います。(今回作る音声付きEPUBはiBooks用となります)
リフロー型でなく、フィックス型である
iBooksは「フィックス(固定)型」EPUBでないと音声読み上げに対応してくれません。別のRSでは以前このブログで制作方法を紹介した「リフロー(流動)型」の音声付きEPUBに対応していますが、そちらついては別の機会に触れてみたいと思います。
音声は「録音した音声」を使用する
電子書籍の「読み上げ音声」には大きく分けて2つの種類があります。
- 文章をあらかじめ何かしらの方法で音声データにしておき、それをテキストデータとリンクさせる。
- テキストデータをその都度機械的に音声合成して読み上げる。(TTS(text to speech)という技術)
今回は「1」の方を使います。
音声を用意するのに一番手っ取り早いのは、当たり前ですが「自分が音読した声を録音する」という方法です。また合成音声のソフト(機械的にテキストを読み上げ、それを音声データとして保存するソフト)も、無料のものも含め、数多くありますのでそちらを利用してもいいかもしれません。
CeVIO Creative Studio
http://cevio.jp/
“オーサリングソフト”というもの
次に「どうやってつくるのか」の話しです。
今までこのブログで紹介した電子書籍制作の手法は、特別なソフトを使わないことが前提でした。その理由は、「簡単な構造の電子書籍を、その仕組みを理解しながら制作すること」が狙いだったからです。
ただ、これから説明する「音声付きの電子書籍」を同じ方法で作ろうとすると、「深い技術知識」と、それを覚えて使えるようになるための「多くの時間」が必要となってしまいます。
なのでここからは「オーサリングソフト(オーサリングツール)」を利用して、作業を進める方法を紹介しようとおもいます。
「オーサリングソフト」とは下記のような定義がされています。
文字や画像、音声、動画などの要素を組み合わせて一つのソフトウェアやコンテンツ作品を組み立てるソフトウェア。特に、プログラミング言語やマークアップ言語などによるコードの記述を極力廃し、マウス操作など直感的な方法で作業を進めることができるようなもののこと。そのような作業のことを「オーサリング」(authoring)という。
ざっくりいうと、
- 作業を自動化する機能がある
- 深い知識がなくてもWYSIWYGで作業ができる
ソフトウェアです。
前にこのブログで作り方を紹介した「シンプルなEPUB」を作る知識さえがあれば、オーサリングツールを使うことにより効率的な作業が可能になります。逆に言えば、いくらオーサリングソフトに便利な機能があっても、EPUBやHTMLについての知識がまったくなければ、使うのは難しいでしょう。
作業の流れ
音声付き電子書籍は下記のような流れで制作していきます。
3. でEPUB制作用オーサリングソフトを、4. ではデジタル文書向け音声付与オーサリングソフトを使用します。次回は1と2の作業を紹介します。
今日のまとめ
これから数回にわたって紹介する「音声付きの電子書籍」の制作方法について
どのようなものを作るのか
→下記のような仕様で
・EPUB
・iBooks用
・固定レイアウト
・録音音声を使用
どのように作るのか
→オーサリングソフトを使用する
作業の流れ
・文章を用意する
・音声を用意する
・EPUBを作る
・作ったEPUBに音声を入れ込む
次回は
電子書籍にする文章データと、それ音声データを用意する方法を紹介します。についてお話します。