固定型EPUBを簡単につくれるツールをつくってみた。
電車の中で電子書籍を読む人が心なしか増えた気がする今日このごろ、みなさまいかがお過ごしでしょうか?久しぶりのブログ更新ですが、私は変わらず電子書籍に関わる日々をすごしております。
今回は「手軽に固定型(フィックス型)EPUBを生成するツール」の紹介です。自身のプログラミング習得を兼ねて自作したツールです。
マンガの電子書籍に広く使われている固定型EPUB、その作成用ツールは既に多くが用意されていますが、今回自作するにあたっては、より直感的な操作が可能なツールになるよう工夫しました。
3種データを用意する→ドラッグアンドドロップ→完成
1:必要な3種のデータを用意します。
1)画像ファイル
2)書誌ファイル
タイトル、著者、出版社名などを入力した書誌情報ファイルをCSV形式で用意します。エクセルを使うと簡単に作れます(.xlsxファイルなどと同じように、入力項目をセルで扱えます)。Excelがなければテキストエディタでも作成できます。
3)目次ファイル
目次項目と該当ページ番号を入力した書誌情報ファイルをCSV形式で用意します。今回は書籍内に明記されている目次項目とそのノンブルをもとにファイルを作成しました。
2:ツールでEPUBファイルを書き出す。
ツールを起動し、先に用意した「画像フォルダ」「書誌CSVファイル」「目次CSVファイル」を、順にドラッグアンドドロップしていくとEPUBファイルが作成されます。
上記の作業のデモ動画も用意したので興味のある方はぜひご覧ください。
使い方。そのシーン。
今回作ったツールは、以下の様な使い方に向いているかも、です。
パソコン操作に詳しくないひとがEPUBを作る
以前アルバイトの方の手を借りてEPUB制作をしたことがありますが、一番苦心たのがヒューマンエラー対策でした。どんなに気をつけても入力ミスはおきますし、PC操作に慣れていない人ほど誤入力や操作ミスが多く、そのチェックと修正には多くの時間が掛かります。本ツールではドラッグアンドドロップで項目を一括入力することで、人為的ミスの原因を減らすように工夫しました。
作業分担してEPUBを作る
本ツールは、書誌や目次の情報を外部ファイル(CSVファイル)で読み込みます。これにより「書誌なら書誌の作成だけ」「目次なら目次の作成だけ」「EPUBの書き出しなら書き出しだけ」といった作業分担をしやすくなります。また書誌や目次の文字校正は、EPUBファイル自体にではなくCSVファイルに対して行えば良いので、校正と制作の並行作業が容易です。
まとめ
大量のフィックス型EPUBを統一されたルールで効率的に制作したいケースに結構使えると思います。某事業のときにこのツールを作るスキルが自分にあればよかったのですけどね…*4。ご興味ある方には無料で差し上げますのでご連絡ください。
・フォームからのご連絡はこちらへ。
・Twitterからでもどうぞ。
Windowsで動きます。(Windows7の32bitと64bitで動作検証済)
*1:利用は私的範囲内で。スキャンデータを他者に渡すのは法的にNGです。
*2:本記事のEPUB作例内で引用させていただいたのはこちらに該当するデータです。(引用元:漫画 on web http://mangaonweb.com/ タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名:佐藤秀峰 )
*3:違法データの利用はダメゼッタイ。
*4:当時の経験がこうしてツールづくりに活かされているのだから、まあ良かったのかも。プログラミングに取り組むきっかけにもなったわけですしね。
音声付き電子書籍を作る(Readium用)
リフロー型の音声付き電子書籍を作る
今回はリフロー型の音声付き電子書籍を作ります。
リフロー型は「文字を拡大して読める」というメリットがあります。(※単純な「拡大表示」でなく。くわしくはこちらで。)
その意味では文字サイズを大きくして読みたい方(高齢者や弱視の方)には適した型式だといえます。
何で読むか
今回は Readium という仕組みを使い、PC(もしくはMac )で音声付きEPUBを読む方法を紹介します。
Readiumは単体で動くアプリではなく、Chrome というウェブブラウザ上で動く仕組み(プラグイン)です。
そのため、ReadiumでEPUBを読むには
が必要になります。
ChromeとReadiumのインストール方法についてはこちらを御覧ください。
リフロー型の音声読み上げができるEPUBリーダーとしては、Himawari Reader というアンドロイド端末用アプリがあります。こちらも大変使いやすいと評判なのですが、私自身がAndroid端末を持っておらず、試せていないのでここでは触れないでおきます。端末をお持ちの方は是非お試し下さい。
どう作るか
作業の流れとしては、
という手順になります。
この流れ自体、iBooks用の音声付き電子書籍と同じですが、「3.」の工程で作るEPUBが「フィックス型」でなく「リフロー型」になります。
今回は前回作成したiBooks用のフィックス型EPUBをリフロー型に作り変え、Readiumを使い音声付きで読んでみます。(前回作ったファイルはここからDLできます。)
フィックス型をリフロー型に作り変える
EPUBを「フィックス型からリフロー型に作り変える」ということは、スタイルを制御しているCSSファイルやそこへリンクを作り変えることを意味します。その作業をFESEeを使って行います。
まず前回作った「うさあなピータのはなし.epub」を、FUSEeで開きます。その際、開く形式を聞かれるので「EPUBの構成で開く」を選びます。
次にメニューバーの「ファイル」から、「書き出し」→「EPUBに書き出し」を選択します。
ファイル名を「うさあなピータのはなしtate.epub」とし保存ボタンを押すと、「保存オプション」ウィンドウが開くので、
・保存形式:EPUB3
・表紙画像:チェック外す。リストからcover.pngを選択
・ページ送り:右から左
・改行コード:変換しない
・固定レイアウトを有効にする:チェック外す
・iBooksオプション:チェック外す
として保存ボタンを押します。
この作業により各ページファイル内からフィックス型EPU固有の情報が削除されました。
次にCSSファイル自体を差し替えます。
ツリービュー内、styleフォルダ内にあるfixed-layout.cssを削除します
続いて新たにリフロー型のスタイルを制御するCSSを作ります。
ツリービューで「styleフォルダ」を選択後、新規作成ボタンから「スタイルシート新規作成」を選択します。
するとファイル名を入力するウィンドウが開くので「standard」と入力しOKボタンを押します。
standard.cssファイルがstyleフォルダに作成されました。
次にstandard.cssをコード編集画面で開き、下記内容を記述します。
/* 縦書きの指定 */
html {
-epub-writing-mode: vertical-rl;
-webkit-writing-mode: vertical-rl;
writing-mode: vertical-rl;
}/* 書体と行間の指定 */
p {
font-family: serif-ja, serif;
font-size:1.25em;
line-height:2.5em;
}
このようになります。
続いて各ページファイルを修正していきます。
各ページファイルにはCSSへのリンクがあります。現状では先ほど削除した古いCSSファイルへのリンクとなっているのでこれを書き換えます。
前付(p-fmattar1、p-fmattar2)と本文(p_1〜p_26)のxhtmlファイルをツリービューでまとめて選択します。
この状態でメニューバーの「検索」から「選択ページ置換」を選びます。
すると下のような「選択ページ置換」ウィンドウが開きますので、
検索する文字列に fixed-layout.css
置換する文字列に standard.css
と入力して「全て置換」ボタンを押します。
この作業により、前付、本文のxhtmlファイル(全28ファイル)に共通で記述されていた
<link
rel="stylesheet"
href="../style/fixed-layout.css"
type="text/css" />
が
<link
rel="stylesheet"
href="../style/standard.css"
type="text/css" />
と書き換えられました。
このような「一括書き換え機能」は、オーサリングソフト(FUSEe)の大きな特長で、作業の効率化に寄与する便利な仕組みです。
最後に、表紙のページファイル(cover.xhtml)の一部を下記の通り修正します。
<link
rel="stylesheet"
href="../style/fixed-layout.css"
type="text/css" />
の記述を削除
style="width:100%;"
を
style="height:400px;"
に書き換える
下記のようになっていればOKです。
以上作業が完了したら終わったら
ツールバーの「ファイル」から「上書き保存」し、完成です。
Readiumに作ったEPUBをアップロードして読んでみましょう。
今回作成手順を紹介した Readiumで読める音声付き電子書籍 がどのようなものなのか、確認できる動画をアップしてみましたのでご覧ください。※音声が出ます
前回作ったフィックス型と同じで、一度ファイルを開くとあとは自動でページめくりをしてくれます。*1また、この動画では文字の大きさを変更する様子も観ることが出来ます。
なお、今回作成したファイルを下記からダウンロードできます。
Dropbox - うさあなピーターのはなしtate2.epub
興味のある方はご自身の環境にReadiumを導入し、試していただければと思います。
音声付き電子書籍を作る(iBooks用_4)
作ったEPUBに音声を入れ込む。
それでは前回までに作ったフィックス型EPUBに音声を入れ込んでみましょう。
先にお伝えしたとおり、EPUBに音声データを入れ込むのに、それ用のオーサリングソフトを使います。
Tobi: an authoring tool for DAISY *1 and EPUB 3 talking books
http://www.daisy.org/project/tobi
こちらの「Tobi」は、DAISYやEPUB3のデータに、人の声を入れ込んだり、音声の編集をするためのソフトです。(windows用:無料)
早速こちらをインストールしてみます。上の画面の「› Install / Update ‹」のリンクをクリックしダウンロードページを開き、そこの「ClickOnce .NET 4」のリンクからインストーラをダウンロードします。*2
インストーラをダブルクリックし、インストールを進めます。
完了すると、下のようなウィンドウが自動で開き、ソフトが起動します。
自分で起動するときは、デスクトップに生成されるショートカットアイコンをダブルクリックします。
TobiにEPUBを取り込む
Tobiが起動したら、音声を入れ込むためのEPUBファイルを読み込みます。
メニューバーの「File」をクリック、「Import」選択し、次に取り込みたいファイル(今回は「peter_rabbit.epub」)を選択し「開く」を押します。
そうすると下のような「EPUB-Check?」というウィンドウが開きますので、「No」のボタンを押します。*3
次に「Project audio format」ウィンドウが立ち上がるので、ドロップダウンリストから「Hz44100」を選びチェックボックスは全て外し、Okボタンを押します。
すると下のような「Project spine」というウィンドウが立ち上がります。これはEPUB内にある「ページファイル」の一覧です。
それと同時に「peter_rabbit.epub_ZIP」と「_XUK」という名前のフォルダが、自動で作られます。これらのフォルダはインポートしたEPUBと同じ階層に作られます。
「peter_rabbit.epub_ZIP」フォルダは、TobiにインポートしたEPUBファイルを解凍したもの。「_XUK」フォルダは、Tobiの作業途中のファイル置き場です(多分)。どちらも現状では直接触ることはないので、「フォルダが2つ自動で生成される」ということだけおさえておけばOKです。
作業自体は「Project spine」ウィンドウで介して行います。
それではProject spineウィンドウを使って、EPUBのページごとに音声を入れ込んでいきます。2行目(本扉のファイル)を選択してOkボタンを押します。
すると下のような画面が表示されるので、ウィンドウの左下にあるフォルダのマークのボタンを押して音声ファイルを取り込みます。
すると下のようなウィンドウが開くので、録音した音声ファイルをまとめたフォルダから、このページ(本扉)を読み上げたファイル(例の場合:hyoudai.mp3)を選び、開きます。
そうすると画面の下の方に、インポートした音声の波形が表示され、「▷」ボタンを押すと再生することができます。赤い線が左から右へと音声波形の上を移動していくことにより、現在どの部分の音声が再生されているかわかる仕組みになっています。
文の区切りごとに音声を割り当てる
今回インポートしているEPUBには、音声を割り当てるための「区切り用タグ」が、あらかじめ設定しましたで、その区切りごとに音声を割り当てていきます。
まず1行目をクリックし、文字に緑の帯がついた状態にします。次に音声再生ボタン(▷)を押します。そして「一区切り目」(この場合一行目の「あなうさピーターのはなし」)を読み終わったところで一時停止ボタンを押します。(再生中は、再生ボタンだった場所が一時停止ボタンに変化します。またSpaceキーを押しても一時停止します)※波形の上の白文字は説明用です。実際ソフト上で表示されるものではありません。
上のような状態で、Ctrlキーを押しながらReturnキーをおします。
すると一時停止するよりも前に読み上げられた波形は見えなくなり、未再生部分だけが波形表示として残ります。それと同時に文字に付く「緑の帯」が、自動で次の「区切り」に移動しています。
再度、再生を開始し、次の区切りの終わりまできたらまた一時停止を押し、Ctrlキー+Returnキーを押します。
この作業をページの最後まで繰り返し行います。
最後まで行ったら、上矢印のボタン(文字画面と音声波形画面の間にあります)を押し、ページ全体の音声波形を表示し、その区切りを確認します。
頭から音声を再生すると、読み上げている「区切り」と、文字に付いている「緑の帯」が、連動して動く様子を確認できると思います。これと同じ動きがiBooksで再現されます。
確認できたら保存(メニューバーの「File」→「Save」)をしてこのページ(本扉)への作業を完了します。続けて他のページも同じ手順で作業をしていきます。
なお別のページファイルを開くには、メニューバーの「File」→「Project spine」を選択します。すると最初のインポート時に現れたProject spineウィンドウが開きますので、そこから別のページファイルを選択し、音声の割り振り作業を続けます。
作業を途中で中断する場合は、普通に保存(メニューバーの「File」→「Save」)をすればよいのですが、中断した作業を再開するとき(保存したデータを呼び出すとき)のやり方が、ちょっとわかりにくいので説明します。
Tobiのメニューバー、「File」から「Open」を選択します。
すると、どのファイルを開くのか指定を促すウィンドウが開くので、最初に自動生成される「_XUK」のフォルダ内、「peter_rabbit_epub-うさあなピーターのはなし→_content_opf-うさあなピーターのはなし.xukspine」を選択し、開くボタンを押します。
これでさっき保存した状態から作業を再開でします。
音声の入れ込みをしながら、区分けの長すぎや短すぎに気づくこともあると思います。しかし今の作業時点でそれを修正することができない(多分。もしかしたらやりかたがあるかもしれません)ので、気になった部分はメモに取るなどして覚えておき、後で直すことにします。
すべてのファイルに音声の入れ込み作業が終わったら、音声入りEPUBを書き出します。
メニューバーの「File」から「Project spine」を選択しProject spineウィンドウを開き、下の方にある「Export full EPUB」のボタンを押します。
そうするとExport settingsウィンドウが開くので一番上のドロップダウンリストを「Hz44100」、その下にあるいくつかのチェックボックスは、全てチェックを外したうえでOkを押します。
そうすると保存場所の指定を促されるので、任意の場所(デスクトップなど)を指定し保存します。
その後EPUB-Checkをするか聞かれるのでNoのボタンを押します。
すると指定した場所に「_content_opf-うさあなピーターのはなし.xukspine_EX」というフォルダが作られ、その中に「うさあなピーターのはなし.epub」という音声付きEPUBファイルと、それを解凍した「_ZIP」というフォルダが作られます。
先ほどの音声割り当て作業中に、その割当区分の長短について修正が必要と感じた箇所があれば、下記の手順で修正します。
- 書き出されたepubファイルをFUSEeで開く。(その際、開く形式を聞かれるので「EPUBの構成で開く」を選んで開きます)
- 気になった部分のタグ付けを修正して保存。
- 修正したepubファイルをTobiにインポートし、音声の割り当てをやり直す(修正部分のみ)
- Tobiからepubを再度書き出す。
- 完了
この作業をすると、結果として同じような名前のファイルやフォルダがたくさん作られてしまい、バージョン管理(どのファイルが新しいのか古いのか?の管理)が煩雑になります。
最初にしっかりとしたルールを決めてからタグ付け(区切り位置の指定)を行うことお勧めします。
(中間ファイルを修正して対応する方法があるような気がするのですが…ご存知の方がいたら教えて下さい)
作った音声付きのEPUBファイルを下記からダウンロードできます。
Dropbox - うさあなピーターのはなし.epub
ご興味のある方はiBooksで読んでみてください。
なお、今回の記事は下記サイトの情報を参考にさせていただきました。
ありがとうございます。
音声付き電子書籍を作る(iBooks用_3)
ベースとなるEPUBを作る
先にお伝えしたとおり、ここからは「オーサリングソフト」という便利なツールを使って作業を進めていきます。
まずはじめに、ベースとなる「フィックス型EPUB」を「EPUB制作オーサリングソフト」を使って作成していきます。
FUSEe(有料)
http://fusee.jp/product.php
以前作った「こころ」のEPUBを、このFUSEeで開いてみます。
開いたウィンドウの一番左側には、そのEPUBの目次構造が表示されます。
そのとなりの「ツリービュー」には、EPUB内のファイル構造がわかりやすく表示されます。手作業だとその度EPUBを解凍して確認・変更しなければいけなかった作業を、この「ツリービュー」を使って手軽に行うことが出来ます。
右側の大きなウィンドウは、ファイルの「編集画面」と「プレビュー画面」を切り替えながら作業できるスペースです。
タグや文章などを「コード編集」画面で修正し、その結果を「ビューワ」画面に切り替えて編集結果を確認する、といった反復作業をひとつのソフトウェア内で素早く行うことができます。
実際にやってみます。
まずは「コード編集画面」で、本文の先頭に文章を追加してみます。
次に、画面上方にある「タブ」で「ビューワ画面」に切り替えてみます。すると修正が反映されていることが瞬時に確認できます。
今までのテキストエディタとブラウザを使った制作方法だと
- テキストエディタで、文字を追加(修正)し保存
- ブラウザで開きなおして変更箇所の確認をする
という2つのソフトを行き来する手間があったのですが、オーサリングソフトのFUSEeを使えばタブの切り替えだけで瞬時に変更の反映が確認できます。
コードティングは反復作業が多いので、使うほどその便利さを感じることができます。
ここからはこのようなオーサリングソフトの便利な機能を紹介を交えながら、音声付き電子書籍を制作方法を紹介していきます。
このブログを読まれる方は、逆に「もしこの作業をオーサリングツール無しでやるとしたらどれくらい手間がかかるか」を想像しながら読み進めると、オーサリングツールの有用性を感じることができるかもしれません。
それではFUSEeを使って電子書籍を作っていきます。
作業前準備
EPUBを作り始める前に、まずはFUSEeを立ち上げてソフトの環境設定をしておきます。(メニューバーの「ファイル」→「環境設定」)
「カバー・目次」タブの、「目次を自動生成する」のチェックは「外す」
「ページ」タブの、拡張子は「XHTML」を選択。ソースデータは「HTML5形式」を選択
「レイアウト」タブの、固定レイアウトに「チェックを入れる」。
幅に「600」、高さに「800」と入力し、そのあとに固定レイアウトのチェックを「外す」
「ファイル」タブの、「ファイル関連付け」の「.fprjをFUSEeに関連付け」に「チェックを入れる」
これで環境設定は完了です。
次に新規ファイルを開きます。(メニューバーの「ファイル」→「新規作成」)
開いたら続けてプロジェクトファイルを作成します。(メニューバーの「ファイル」→「名前をつけて保存」)
プロジェクトファイルとは、拡張子が「.fprj」のファイルで「FUSEeの作業途中の状態を保存するためのファイル形式」です。
ファイル名を「peter_rabbit」として保存ボタンを押します。
すると
保存オプションウィンドウが出ますので、それを下記の通り設定します。
保存形式は「EPUB3」
固定レイアウトを有効にするに「チェックを入れる」
iBooksを有効にするに「チェックを入れる」
幅の数値を「600」、高さの数値を「800」にする
iBooksオプションのオリジナルフォントを有効にするに「チェックを入れる」
設定が終わったら保存ボタンを押します。
すると下のようなファイルが生成されます。
以後、FUSEeで作業している途中に「上書き保存」をするとこのファイルに情報が書き込まれます。
次に書誌情報(このプロジェクトファイルで作成する本の情報)を入力します。ツリービュー内で「 cover.xhtml 」を選択し、書誌情報編集タブをクリック。下記の通り入力します。
- 書籍タイトル
- あなうさピーターのはなし
- 著者
- ベアトリス・ポッター
- 言語
- Japanese
- 出版社
- 青空文庫
入力したら上書き保存します。
FUSEeへ画像を取り込む
次に絵本でつかう挿絵の画像を、一括でFUSEeで取り込みます。
ファイル追加ボタンから「画像ファイル追加」ボタン選択します。
取り込む画像(青空文庫から先にダウンロードしたもの)を選択して「開くボタン」をクリックします。
imagesフォルダに画像が取り込まれました。
青空文庫には「表紙」がないので、表紙用の画像は別に用意しました。
下記よりダウンロードできます。
https://www.dropbox.com/s/simccokpnexggcy/cover.png?dl=0
コチラの画像も先ほどと同じ要領でimagesフォルダへ入れて下さい。
表紙と前付のページファイルをつくる
続けて各ページのxhtmlファイルを作っていきます。
まずは表紙です。
表紙には、画像を一枚めいいっぱいのサイズで表示します。FUSEeのプロジェクトファイル作成時に、あらかじめ「cover.xhtml」というファイルが自動で作られていますので、これを使います。
コード編集画面を開き、<p>と</p>の間にカーソルを置いた状態でCtrl+Shift+Iを同時に押すとimagesフォルダ内の画像リストが表示されるので、そこから「cover.png」を選択します。
するとコード編集画面のカーソル位置に表紙の画像タグである
<img src="../images/cover.png" alt="" />
が挿入されています。
さらに、画像が画面に対してぴったりのサイズで表示されるように、「img」の後ろに「 style="width:100%;"」を追加して完了です。
次に前付です。
新規作成ボタンから「ページ新規作成」を選びます。
すると「ページ新規作成」ウィンドウが開くので
ページ名に「fmatter」
ページの複製の数値を「2」
にしてOKボタンを押します。
するとツリービューの text フォルダ内に、「fmatter1.xhtml」「fmatter2.xhtml」という名前の連番の振られたページファイルが作成されています。
fmatter1は「本扉(中表紙)」となります。
タイトル、著者名、訳者名と、その下に「fig51344_01.png」の画像を配置する体裁にします。
まず「タイトル、著者名、訳者名」のテキストデータをいれます。
「あなうさピーターのはなし」のテキストファイルを開き、該当部分をコピーし、<body>の下の行に貼り付けます。
次に、貼り付けた文章を選択した状態でCtrl+Shift+Pを同時に押すとpタグが付与されます(前に<p>、後ろに</p>が付与されます)。併せて各行が改行表示されるよう、改行タグも付与します。
改行したい部分にカーソルを置きCtrl+Shift+Cを押します。そうするとカーソルのあった場所に「<br />」が付与されます。
「段落タグ」と「改行タグ」が付与されると下のようになります。
次に画像を配置します。表紙と同じ要領で<p>と</p>の間にカーソルをおいた状態で、Ctrl+Shift+Iを押し、画像リストから「fig51344_01.png」を選びます。続けて全体の体裁を整えるために、下記のとおりいくつかのスタイルを指定します。
指定したスタイルは
・ページの縁、天地左右に30pxの余白をとる
・文字、画像ともページの左右センターに配置する
・文字のサイズは1.5emに
・画像は高さを400pxで表示する
です。
「スタイル」やそれを指定する「タグ」ついては、HTMLとCSS(Webの技術)の話しになりますので、詳しくはGoogleなどで検索してみてください。また以前このブログでもいくつか初心者向けのサイトを紹介してますので、よければそちらも参照下さい。シンプルな電子書籍を作るのであれば、初心者レベルのWebの知識をおさえておけば充分です。
指定したスタイルが反映されると、FUSEeのビューワでは下のように表示されます。
次にもうひとつの前付ページを作成します。
こちらのページには「fig51344_02.png」と「fig51344_02.png」の画像をそれぞれページの上下に配置します。
まず<p>と</p>の間にカーソルを置き、画像タグ配置のショートカット(Ctrl+Shift+I)を使い、画像「fig51344_02.png」を配置します。
続いてその次の行に、画像「fig51344_03.png」を、同じくショートカットを使い配置し、さらにその前後に「段落タグ」を付与します。
段落タグの付与は、imgタグ全体を選択してから Ctrl+Shift+P のショートカット(段落タグ付与のショートカット)を使うことで行います。
続けて全体の体裁を整えるためのスタイルを付与して完了です。
ここで指定するスタイルは
・ページの縁、天地左右に30pxの余白をとる
・画像はページの左右センターに配置する
・画像は高さを350pxで表示する
です。
コードは下記のようになっていればOKです。
FUSEeのビューワでは下のように表示されます。
本文のページファイルをつくる
続いて本文のページファイルを作ります。
新規作成ボタンから「ページ新規作成」を選択します。
すると下のような「ページ新規作成ウィンドウ」をが立ち上がります。ここでページ名の入力欄に「 p_ 」を、ページの複製の数値を、今回作成する絵本の本文ページ数である「26」、と入力しOKボタンを押します。
すると「p_1」から「p_26」までの連番のついた本文ファイルが作成されます。
続けて生成されたにファイルそれぞれに、そのページで表示する「文字」と「画像」を配置していきます。
早速1ページ目を作ってみます。
まずは画像を配置します。
既に入力されてある<p>と</p>の間にカーソルを置き、ショートカット(Ctrl+Shift+I)を使い「fig51344_04.png」を配置します。
次にその下に、ここで使うテキストデータを、ダウンロードしたテキストファイル内からコピーしてきて貼り付けます。
そして本扉の作成の時とおなじように、段落タグ( p タグ)と改行タグ(<br />)をショートカット(Ctrl+Shift+C)を使い付与します。
そしてつづけて、こちらも全体の体裁を整えるスタイルを指定します。
ここで指定したスタイルは
・ページのフチに30pxの余白をとる
・画像はページの左右センターに配置する
・画像は高さを400pxで表示する
です。
コードは下記のようになっていればOKです。
FUSEeのビューワでは下のように表示されます。
文を任意の長さで区切る
これから作る音声付きEPUBは、その時点で読み上げている箇所を「ハイライト表示」する機能がついています。
このハイライトする箇所を「どこで区切るのか」は、タグの付与によって設定します。
それではやってみます。
まずは、「どこで区切るか?」を考えます。
基本的には「句読点で区切る」ようにすれば良いのですが、場合によってはそれだとハイライトが「長すぎたり」「短すぎたり」することがあるので、なるべく一定の長さになるよう、臨機応変で良いと思われます。
今どの部分の音声が再生されているのかが、読み手が理解しやすいよう留意して、区切りの位置を決めます。
タグの付け方は、ハイライト表示したい部分ひとかたまりの、前に<span class="mo">、後に</span>を付与し、はさみます。
下のようになっていればOKです。
なお、このタグはあくまで音声の割り振りに必要な情報ですので、ビューワでの見た目になんら変化はありません。
以上で1ページ目の作業は完了です。
2ページ以降も1ページ目と同じ手順とルールで作っていきます。
なお、すでに御覧いただいたとおり、今回作成する「絵本」は、全ページ共通で「ページの上側が挿絵、下側に文字を配置する」という体裁にします。
また、先に作業した「本扉( fmatter1.xhtml )」にも音声を付与するので、「区切り」のタグを立ち返って付与しておきます。下記のようになればOKです。
<p style="font-size:1.5em;">
<span class="mo">あなうさピーターのはなし</span><br />
<span class="mo">THE TALE OF PETER RABBIT</span><br />
<span class="mo">ベアトリクス・ポッター<br />
Beatrix Potter</span><br />
<span class="mo">おおくぼゆう やく</span></p>
次にツリービューを使い、いくつかある前付か本文のファイルのうちからひとつを選び、「コード編集タブ」で開いてみてください。下の画像のように、8行目に「<title></title>」という表記があると思います。
ここの<title>と</title>の間に、書籍のタイトル名である「あなうさピーターのはなし」という文字を入力していきます。
この作業を1ファイルずつ、手作業でやってもよいのですが、ここではオーサリングソフトにある「一括変換の仕組み」を使って手早く作業する方法を紹介します。
まずツリービューで前付と本文のページファイルをすべて選択します。(coverとnavは選択しない)
そうしたら、メニューバー「検索」から「選択ページを置換」をクリックします。
すると検索ページ置換ウィンドウが開くので、検索する文字列に「<title></title>」、置換する文字列に「<title>あなうさピーターのはなし</title>」と入力し、「全て変換」ボタンを押します。
前付と本文のページファイルすべての8行目が先ほど指定した通りに変換されていることが確認できます。
これを検索置換機能といい、「複数のファイル内に存在する任意の文字列を「検索」し、それを希望する内容に一括で「置換」する」機能です。編集するページファイルが増えれば増えるほと、この機能は非常に便利なものになります。
このような便利な機能(反復作業を低減する機能)使えるのが、オーサリングツールを利用する大きなメリットです。
EPUBを書き出す
全ページ作業が終わったらプロジェクトファイルからEPUBを書き出します。
メニューバーの「ファイル」から「書き出し」→「EPUBに書き出し」を選択します。
すると書き出したEPUBを保存する場所を聞かれるのでそれを指定し保存ボタンを押します。すると「保存オプション」ウィンドウが開きますので、そちらを下記の通り設定します。
保存形式は「EPUB3」
表紙画像
表紙画像を生成するの「チェックは外す」
画像ファイル名のドロップダウンリストから「 images/cover.png を選択」
ページ送り
「左から右」を選択
改行コードは「変換しない」を選択
固定レイアウト
固定レイアウトを有効にする に「チェックを入れる」
iBooksを有効にする に「チェックを入れる」
幅「600」
高さ「800」
iBooksオプション
オリジナルフォントを有効にするに「チェックを入れる」
設定ができたら保存ボタンを押します。
これでフィックス型EPUBが書き出されます。
ここまでの作業で作ったEPUBを下記からダウンロードできるようにしておきますので、よかったらダウンロードしてみてください。音声なしの普通のフィックス型EPUB絵本として使えます。
https://www.dropbox.com/s/rxtq3j1q8zgsn6y/peter_rabbit.epub?dl=0
今日のまとめ
EPUBオーサリングソフト「FUSEe」
・機能の紹介
・固定レイアウトのEPUB作成
をお伝えしました。
次回は
このEPUBに音声データを入れ込む作業を行います。
その作業には別のオーサリングソフト(デジタル文書向け音声付与オーサリングソフト)を使用します。
音声付き電子書籍を作る(iBooks用_2)
電子書籍にする文章を用意する
それでは音声付き電子書籍づくりをはじます。まずは本に使う文章(今回は挿絵も)を用意します。今回も例によって本の素材データは「青空文庫」からお借りします。
あなうさピーターのはなし
http://www.aozora.gr.jp/cards/001505/card51344.html *1
皆さんご存知の「ピータラビット」のおはなしです。
今回はこれを声の出る絵本として電子書籍にしていきます。
青空文庫のページの下方、テキストファイル(ルビなし)のリンクをクリックし、zipデータをダウンロードします。zipファイルを解凍すると、「本文のテキストファイル」と「挿絵の画像ファイル」が確認できます。
文章の音声データを用意する
次に文章を読み上げた音声データを用意します。
先にも書いたとおり、「自分で音読して、その声を録音する」というのがいちばん手っ取り早いので、その方法で行きます。
なお合成音声をご利用希望の方はこちらの無料ソフトなど使うといいかもです。紹介動画もあります。
では音声を録音してみましょう。
まずはダウンロードした「あなうさピーターのはなし」のテキストファイルを開き、その内容を音読していきます。
録音には、近頃のパソコンにほぼ間違いなく付いている「内蔵マイク」と「録音ソフト」を使います。内蔵マイクについては特に設定なしで使えると思います。
録音ソフトは下記のものが標準で用意されているはずです。
サウンド レコーダー(Windows)
使い方
http://121ware.com/qasearch/1007/app/servlet/qadoc?QID=012091
QuickTime(Mac)
使い方
http://motw.mods.jp/Mac/sound_recoding.html
今回は1ページごとに1ファイルになるよう録音します。また書名、著者名、訳者名も忘れずに録音します(本扉でつかいます)。そうすると今回の「あなうさピーターのはなし」の場合、音声ファイルの数は全部で「27」(本扉1ページ+本文26ページ)となります。
また、音声ファイルの保存形式には様々ありますが、今回使用できるのは .wav .m4a .mp3. mp4 のいずれかになります。録音した音声ファイルの拡張子が上記以外の場合は、別途ファイル形式を変換して下さい。
音声ファイルの変換ソフトはフリーでいろいろあり、ネットで検索すればすぐ探せますが、iTunesを使って変換もできるようなので、既にご利用の方は試してみてください。
http://flytransfer.wordpress.com/2013/07/19/convert-wma-to-mp3-using-itunes/
余談
音読を録音して感じたのは、「滑舌を意識してゆっくり読むことを意識すると、いくらかマシな感じになるかな」ということ。プロじゃないのでうまくはないのは当然なのですが、いかんせん「録音して聞く自分の声」というのは、なぜこうもひどく恥ずかしく感じるのでしょうか、謎です。同じように感じる方におかれましては、今回の「音声付き電子書籍を作る」というミッションのために少々我慢です。普段の自分のしゃべり方の改善に役立てる、という手もありますし。
今日のまとめ
音声入り電子書籍の素材の準備
電子書籍に使う音声データ
→録音用ソフトを使い音読した音声データを録音。
次回は
オーサリングソフトを使ったEPUB制作についてお話します。
*1:なおこの作品の翻訳については著作権は存続していますが「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス」によって公開されており、それに従いこのブログで公開しています。
ライセンス要約
http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/
ライセンス
http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/legalcode
音声付き電子書籍を作る(iBooks用_1)
「電子書籍」ならではの機能=音声
様々な電子端末で読むことができる電子書籍ですが、そのうちの多くが「単に紙の書籍を電子化したもの」です。もちろんそれはそれで便利で有用なものなのですが、かたや「電子」ならではの特長を活かした電子書籍もあります。
そのなかでもニーズが高い音声付き電子書籍について、その作り方を紹介します。
音声付き電子書籍は
- 語学学習用教材として
- オーディオブック(耳でも読める本)として
- 視覚障害者の方向けの「本」や「教科書」として
など、既に様々な分野で利用され、今後一層の普及が予想されます。
上の動画と同じような機能を持ったEPUBを、これから数回に渡り、作り方を紹介していきます。
このブログでは、Appleの「iBooks」(iPhoneやiPad、Mac(OS X 10.9〜)で利用可能)で読める音声付き電子書籍の作り方を紹介していきます。なお今回このリーディングシステム(以下RS)を選んだ理由は「使いやすさ」と「音声付き電子書籍機能が使えるRSとして普及しているもの」だからです。
「音声付き」とはいえ、その構造自体は、このブログで紹介してきた「EPUB」なので、ベーシックなものを作るのであれば、普通のEPUBを作る知識で十分です。
逆に「凝ったこと」をやろうとすれば、それ相応の知識(HTMLやCSS=web制作の知識)が必要になるのは、普通のEPUB電子書籍と同じです。
まずはベーシックな「音声付き電子書籍」を作ってみましょう。
仕様について
まずは「どのようなものを作るのか」の話しをします。
仕様はざっくりいえば下記のとおりです。
- 基本的にEPUBである
- リフロー(流動)型でなく、フィックス(固定)型である
- 音声は「録音した音声」を使用する
基本的にEPUBである
「基本的に」とつけたのは、「すべてのRSで音声が機能するわけではない」という意味です。EPUBの規格に沿った構造で制作はしていきますが、いくら音声データを埋め込んだところで、RSにそれを動かす仕組みがなければ「普通の電子書籍」としてしか機能しないのはご理解いただけると思います。(今回作る音声付きEPUBはiBooks用となります)
リフロー型でなく、フィックス型である
iBooksは「フィックス(固定)型」EPUBでないと音声読み上げに対応してくれません。別のRSでは以前このブログで制作方法を紹介した「リフロー(流動)型」の音声付きEPUBに対応していますが、そちらついては別の機会に触れてみたいと思います。
音声は「録音した音声」を使用する
電子書籍の「読み上げ音声」には大きく分けて2つの種類があります。
- 文章をあらかじめ何かしらの方法で音声データにしておき、それをテキストデータとリンクさせる。
- テキストデータをその都度機械的に音声合成して読み上げる。(TTS(text to speech)という技術)
今回は「1」の方を使います。
音声を用意するのに一番手っ取り早いのは、当たり前ですが「自分が音読した声を録音する」という方法です。また合成音声のソフト(機械的にテキストを読み上げ、それを音声データとして保存するソフト)も、無料のものも含め、数多くありますのでそちらを利用してもいいかもしれません。
CeVIO Creative Studio
http://cevio.jp/
“オーサリングソフト”というもの
次に「どうやってつくるのか」の話しです。
今までこのブログで紹介した電子書籍制作の手法は、特別なソフトを使わないことが前提でした。その理由は、「簡単な構造の電子書籍を、その仕組みを理解しながら制作すること」が狙いだったからです。
ただ、これから説明する「音声付きの電子書籍」を同じ方法で作ろうとすると、「深い技術知識」と、それを覚えて使えるようになるための「多くの時間」が必要となってしまいます。
なのでここからは「オーサリングソフト(オーサリングツール)」を利用して、作業を進める方法を紹介しようとおもいます。
「オーサリングソフト」とは下記のような定義がされています。
文字や画像、音声、動画などの要素を組み合わせて一つのソフトウェアやコンテンツ作品を組み立てるソフトウェア。特に、プログラミング言語やマークアップ言語などによるコードの記述を極力廃し、マウス操作など直感的な方法で作業を進めることができるようなもののこと。そのような作業のことを「オーサリング」(authoring)という。
ざっくりいうと、
- 作業を自動化する機能がある
- 深い知識がなくてもWYSIWYGで作業ができる
ソフトウェアです。
前にこのブログで作り方を紹介した「シンプルなEPUB」を作る知識さえがあれば、オーサリングツールを使うことにより効率的な作業が可能になります。逆に言えば、いくらオーサリングソフトに便利な機能があっても、EPUBやHTMLについての知識がまったくなければ、使うのは難しいでしょう。
作業の流れ
音声付き電子書籍は下記のような流れで制作していきます。
3. でEPUB制作用オーサリングソフトを、4. ではデジタル文書向け音声付与オーサリングソフトを使用します。次回は1と2の作業を紹介します。
今日のまとめ
これから数回にわたって紹介する「音声付きの電子書籍」の制作方法について
どのようなものを作るのか
→下記のような仕様で
・EPUB
・iBooks用
・固定レイアウト
・録音音声を使用
どのように作るのか
→オーサリングソフトを使用する
作業の流れ
・文章を用意する
・音声を用意する
・EPUBを作る
・作ったEPUBに音声を入れ込む
次回は
電子書籍にする文章データと、それ音声データを用意する方法を紹介します。についてお話します。
緊デジを振り返りながら:2
一昨日(5/22)に行われた緊デジを振り返る集会@仙台、それに参加して考えた事を申し述べるエントリー、その2回目です。→その1はコチラ
制作期間の変動が制作会社に与えた影響
前回のエントリーで「出版社の緊デジへの仮申請タイトル数:9万点が本申請にほとんど繋がらなかった、その見通しの甘さが緊デジのうまく行かなかった根本的な問題ではないか」ということを書きました。
もし希望的観測に頼らず、別のアプローチでタイトル集めをしていれば、当初の予定通りに2012年の秋には本格的に制作開始ができていたかもしれません。
今回のエントリーでは「もし予定通りに制作が進捗していたら…」という仮定の話しと、二転三転した制作期間の変動、そしてそれが引き起こした問題を、制作会社として参加した私の身辺で起きた実例とあわせて述べたいと思います。
制作期間が予定通りであったなら
もし秋から制作を始められていたとすると、年度末までには約半年の製作期間がとれました。
この「半年」という期間が事業完遂に充分かどうかについては賛否あるでしょうが、少なくとも緊デジが直面した年明けから作業を始めて3月までになんとかするという事態よりは無理は少なかったはずです。
時間はない、でも受けた。その理由
いま私は前の文章で、「制作時間が充分になかったことが問題である」みたいなことを書きましたが、私にそれにとやかくいう権利は実はありません。(それに至る原因を作った「見通しの甘さ」は問題ですが)
それはこういう理由です。
2013年の年明けに、制作会社向けの説明会がありました。
そこで「一気に多数の制作申請が出版社からありました。この仕事を是非一緒に」というアナウンスが緊デジ側からあり、私はそれに対し誰に強要される訳でもなく、自らの意思で参加を決めました。
制作時間が短い事はこの時点で分かっていた事なのですから、他の会社がしたように、制作時間の不足を理由に「受注をしない」とする選択肢もあった訳です。
このような難しい状況でもなお、このお話しを受けたのには理由があります。
もちろん、単に「緊デジの受注で売り上げを上げたい」という気持ちもありましたが、それ以上に大きかったのは「電子書籍の持つ未来の可能性」への期待でした。
それは緊デジが当初に掲げていた「理念」みたいなものと、自分にとってはほぼ同義と感じられました。
- この電子書籍という新しい世界で
- 自分が今までしてきた事を活かし
- 社会の役に立ちながら
- 自分の居場所を新たに得る
昨今このようなチャレンジが出来るチャンスはそう多くないと思います。
受注後の困難は当然予想できましたが、それ以上にわくわくしながら電子書籍制作に取り組み始めました。
その結果起きた事
幸いにも千数百冊の制作依頼をいただき、受注額は数千万円になりました。人件費や設備等のコストは、必要最低限に押さえながら取り組んだかいもあり、某ブログであったような「数億円の借金が…」みたいな話しにはならずに済みました。
年明けからの時間はあっという間に過ぎ、既に報道されている通り「カタチだけ」の制作期間完了である年度末(3月末)を向かえました。
そのあとも不備のある部分を必要に応じて修正することがしばらく続く事となった訳ですが、このとき私はこう考えていました。
この作業をきっちりやって、緊デジ後は出版社から直接発注をしてもらえるようになろうと。
東北の小さな会社が東京の大手出版社と仕事をする機会を得る事など、この緊デジがなければあり得なかったわけですから、これを活かさない手はないと。会社にもその計画を提案しました。
これに対する会社からの返事は「NO」でした。
会社の認識はこうでした。
- 緊デジは単なる役所の年度末仕事である。またその延長作業があることは甚だ遺憾である。
- そのような業務を圧迫する「迷惑千万な電子書籍制作」を、社として今後推進するつもりはない(延長作業は責任持ってやるが)。
緊デジ事業が後手後手に展開する事により、まるでそれ自体が「電子書籍自体の立て付けの悪さ」のごとく会社には伝わってしまったようでした。
私はその会社を辞めました。
もし当初の予定通り半年間の制作期間があったならば、私だけでなく、会社の経営者とも同じ「未来」を共有することが出来たのかもしれない、期間が半年あればそのチャンスは少なからずあったのでは、と思うのです。
私が当時いた会社もそうですが、緊デジに関わった人の多くがこうおっしゃいます。
「もう電子書籍はいいや」
「電子書籍には今後関わりたくない」
このようにおっしゃる方も、もともとは電子書籍の未来を信じて、それにコミットしていた方が大半です。
そんな方々にこのような事を言わせてしまったこと、これは「緊デジ」の罪(といったら言い過ぎかもしれませんが)のような気がします。
一昨日の仙台での会、その質疑応答である方が発言された方がいましたが、この緊デジに最初から悪意をもって関わっていた人は恐らくひとりもいなかったはずです。皆がそれぞれの立場で「出版」や「電子書籍」の未来を真剣に考え、取り組んだにも関わらず、このような結果になってしまったのは、確かに「大失敗」は回避できたのかもしれませんが、自分としてはどうしてももったいなかった感が拭えないのです。